ペット飼育を認める賃貸借契約において、ペット飼育による室内の汚れや腐食、臭い等について、賃貸人は、賃借人に対し原状回復費用を要求できるか。

ペット飼育可の賃借物件の賃借人が退去したが、ペット飼育による室内の毀損が酷い。賃貸人は、原状回復費用を要求したいと考えているが、賃借人は、賃貸人はペットの飼育を認めて賃貸していたので修繕費の負担義務はないと言っている。
事実関係
賃貸借契約は、ペット飼育を条件として締結した。賃借人は、契約締結前に、小型犬を飼うことを賃貸人に申し出ており、賃貸人は了承していた。
退去時の立ち合い時、ペット飼育によるフローリングの糞尿の汚れ及び賃借人がその汚れ等を放置していたことによる床の一部腐食や剥がれが見られ、臭いも酷かった。
賃貸人は、賃借人が居住中にペット飼育による汚れ等の日常の清掃が十分になされなかったのではないかと確認したところ、賃借人は清掃が不十分であることを認めた。
賃貸人は、退去後の部屋の状態が、いわゆる自然損耗であれば原状回復費用を請求することはなかったが、ペット飼育による疵や臭いは自然損耗を超える損耗であるとして、原状回復費用を要求する予定である。
賃借人に原状回復の修繕費負担を伝えたところ、賃借人は、ペット飼育を認めた賃貸借契約であり、賃貸人はペット飼育による汚れ等は当初から認識できたはずであり、原状回復費用を支払う必要はないと主張している。
質 問
ペット飼育を認める賃貸借契約において、ペット飼育による室内の汚れや腐食、臭い等について、賃貸人は、賃借人に対し原状回復費用を要求できるか。
回 答
1. 結 論
賃借人は、賃借物件の善管注意義務を負っており、ペット飼育により特別損耗を生じさせたのであれば、その損耗について修繕責任を負う必要がある。
2. 理 由
賃貸借契約における賃貸借物件の自然損耗の修復費用は賃料に含まれ、賃貸人負担であるのは一般的に知られている。裁判例でも、「賃借物件の損耗の発生は、賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。それゆえ、建物の賃貸借においては、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている」と、賃貸借により生じた通常損耗は賃料に含まれていると解している(【参照判例①】参照)。最高裁判例や多くの裁判例を参考として、賃借人が負う原状回復費用は、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と原状回復をめぐるトラブルのガイドラインで定義している(同ガイドラインのポイント)。また、裁判例等を規範として、「賃借人は、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除き、入居後に生じた損傷を原状に復する義務を負う」旨が改正民法(第621条)で明文化された(令和2年4月1日施行)。
同ガイドライン・別表1では、部位別の損耗・棄損の費用負担の区分における飼育ペットによる柱等のキズ・臭いの考え方について、「共同住宅におけるペット飼育は未だ一般的ではなく、ペットの躾や尿の後始末などの問題でもあることから、ペットにより柱、クロス等にキズが付いたり臭いが付着している場合は賃借人負担と判断される場合が多いと考えられる」としている。裁判例でも「本件居室のフローリングの一部は、飼い猫の糞尿等を長期間放置したことによる腐食のほか、剥離等の毀損が認められ、当該腐食部分は床下の床根にまで浸透していたことが推認される。その損傷の程度は通常の使用から生じる損耗を超えるものであり、また、損傷が生じた原因は、飼い猫による糞尿等の掃除を怠ったことなどの、賃借人の善管注意義務違反にある」として、賃借人の賃借物の善管注意を認め、自然損耗を超える損傷について、賃借人がその原状回復費用を負担すべき特別損耗であると認め、経年劣化を考慮して賃貸人の工事費用の要求を認容したものがある(【参照判例②】参照)。
なお、賃料が通常より高額に設定されていた場合は、特別損耗であっても原状回復費用は賃貸人負担になる場合があるので留意しておきたい。一方、ペットの飼育が禁じられている賃貸借契約では、賃借人が賃貸人の承諾を得ないでペットを飼育したときは、用法違反に該当し、信頼関係を破壊するものとして契約解除の事由とになる場合もあり得る。
○ 最高裁平成17年12月16日 判タ1200号127頁(要旨)
賃借人は、賃貸借契約が終了した場合には、賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務があるところ、賃貸借契約は、賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり、賃借物件の損耗の発生は、賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。それゆえ、建物の賃貸借においては、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。
参照判例②
○ 東京地裁平成25年11月8日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
本件居室のフローリングの一部は、飼い猫の糞尿等を長期間放置したことによる腐食のほか、剥離等の毀損が認められ、当該腐食部分は床下の床根にまで浸透していたことが推認される。その損傷の程度は通常の使用から生じる損耗を超えるものであり、また、損傷が生じた原因は、飼い猫による糞尿等の掃除を怠ったことなどの、賃借人の善管注意義務違反にある。
したがって、当該毀損については、賃借人がその原状回復費用を負担すべき特別損耗であると認められる。
この点、賃借人らは、猫を飼うことは賃貸人から許容されており、その分賃料が高額であったから、上記の損傷に係る原状回復費用は賃貸人が負担すべきである旨を主張するが、飼い猫の管理についての定めである本件特約の内容は記載のとおりであるし、本件賃貸借契約で定められた賃料が、猫を飼うことを許容したことで通常より高額に設定されていたと認めるに足りない。そうすると、賃借人は、賃貸人から本件居室で猫を飼育することを認められていた一方で、その飼育に伴い本件居室に損傷等を生じさせることのないよう善管注意義務を負っていて、その義務の程度が緩和されるべき事情は認められず、猫の糞尿等の掃除を怠ることはこの義務に違反するものである。
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